仙台高等裁判所 昭和62年(行コ)1号 判決
青森市新町一丁目九番二六号
控訴人
有限会社武田開発商社
右代表者代表取締役
武田政治
右訴訟代理人弁護士
尾崎陞
同
清宮国義
青森市本町一丁目六番五号
被控訴人
青森税務署長
秋澤和雄
右指定代理人
佐藤孝明
同
佐々木運悦
同
佐々木邦二
同
津島豊
同
高橋静栄
右当事者間の法人税額の決定等取消請求控訴事件について当裁判所は次のとおり判決する。
主文
本件控訴を棄却する。
控訴費用は控訴人の負担とする。
事実
一 控訴人は、「1 原判決を取り消す。2 本件を青森地方裁判所に差し戻す。」との判決を求め、被控訴人は、主文と同旨の判決を求めた。
二 当事者双方の主張及び証拠関係は、当審における控訴人の補足主張が次項以下のとおりであるほかは、原判決事実摘示のとおりであるからこれを引用する(ただし、原判決二枚目裏末行の「棄却」を「却下」と訂正する。)
三 当審における控訴の補足主張
課税処分に対する異議申立が代理人である弁護士によつてされている場合には、右申立に対する異議決定書謄本は右代理人に送達することによつて、異議決定に対する審査請求手続に遺漏がないように配慮されるべきである。しかるに、本件においては、異議申立代理人として弁護士である控訴代理人が選任され、控訴代理人において異議申立手続を遂行していたにもかかわらず、異議決定書謄本が控訴人本人宛に送達されたため、不服申立期間内に審査請求をすることができなかつたものである。しかも不服申立期間徒過は一日にしか過ぎない。このような場合には国税通則法七七条三項所定の「天災その他前二項の期間内に不服申立てをしなかつたことにやむを得ない理由があるとき」に当たるものとして、審査請求の追完を認めるべきである。
理由
一 当裁判所も、控訴人の本件訴えは、審査請求前置を欠いて不適法であるから却下すべきものと判断するが、その理由は、当審における控訴人の補足主張に対する判断が次項以下のとおりであるほかは、原判決の理由説示と同一であるからこれを引用する(ただし、原判決六枚目表一〇行目の「異議決定書」の次に「謄本を加える。)
二 当審における控訴人の補足主張に対する判断
青森税務署長の昭和六〇年一二月一四日付異議決定書謄本が同月一六日控訴人本人に送達されたことは、引用にかかる原判決の認定したとおりである。そして、本件において、異議申立代理人として弁護士である控訴代理人が選任され、控訴代理人において異議申立手続を遂行していたとしても、本件異議決定書謄本が控訴人本人宛に送達されたこと自体に違法は存しない。のみならず、成立に争いのない乙第五号証及び原判決掲記の乙第六ないし第八号証によれば、本件異議決定書謄本は、控訴人本人から控訴代理人に送付され、同月二〇日、控訴代理人に到達したところ、控訴代理人は、控訴代理人事務所所員が異議決定書謄本に押捺した60.12.20の受領日付印を異議決定書謄本の送達日と誤認し、審査請求期間を同日から一か月と考えて、昭和六一年一月一七日付発送の郵便で国税不服審判所長に本件審査請求書を提出したため、国税通則法七七条二項所定の不服申立期間を一日徒過した事実が認められる。右事実によれば、控訴代理人が不服申立期間を徒過したのは、異議決定書謄本を受領した昭和六〇年一二月二〇日から審査請求することのできる期間である昭和六一年一月一七日までに余裕がなかつたからではなく、控訴代理人において、控訴代理人事務所所員が異議決定書謄本に押捺した60.12.20の受領日付印を異議決定書謄本の送達日と誤認したことによるものにすぎないことが明らかである。そして、このような事情は、たとえ不服申立期間の徒過が一日であつても、国税通則法七七条三項所定の「天災その他前二項の期間内に不服申立てをしなかつたことについてやむを得ない理由があるとき」に当たらないことは多言を要しないから、当審における控訴人の補足主張も採用することができない。
三 よつて、本件控訴は理由がないからこれを棄却し、控訴費用の負担につき行政事件訴訟法七条、民事訴訟法九五条、八九条を適用して主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官 奈良次郎 裁判官 伊藤豊治 裁判官 石井彦壽)